記憶とは何か




自身の線形性を保つための知恵として、認知的不協和理論に基づく
"オプティミズム・バイアス"またはノルマルム広場強盗事件に見られる思い込み
「都合の良いものへのすり替え」――過去の記憶の美化を、我々は”思い出補正”
しばしばそう称するのだった。
しかし補正がなぜ必要なのだろうか。なぜ美化されるのは過去に限られるのか。
18世紀の哲学者トマス・ペインは、愛着こそが全ての価値を決定すると唱えた。
未熟な個は、経験が価値観として残存し主観の投影を生み、愛着を育ませる。
しかし成熟した個は鈍化した感性をもって、現在の何を愛すればよいのだろう。
彼にとってもっとも恐るべきことのひとつは、何気なく年をとり、愛着を失い
自身や国を見失い、やがて人の世をすら見失うことだったのかもしれない。

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