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夢への扉1

予知夢をみるようになったのは、ほんの1ヶ月前のことだ。

予知夢といっても大層なものではなかったが……初めは選ばれたんだと思った。

人間誰だって選ばれたいと思っているのだろう、俺もご多分に漏れずそうだった。

夢は、俺に現実のほんのわずか一片を覗かせた。

夢で見たことが現実になる。

それは本当に馬鹿馬鹿しくて、そして余りに甘美だった。

俺は、いつの間にか失った物をやっと拾い上げたと信じて疑わなかった。





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「ハアッ……ハァ……!」

布団の上で俺は激しく腰を振る。

むわっと湿気の満ちた部屋に篭もり、汗だくでペニスをたたき付ける。

タチバナのアソコは無理やり捻り込まれた肉棒を咥え、愛液を撒き散らせた。



―――予知夢は不可避。

それだけはまぎれもなく現実で、でも俺は、それだけは信じられず―――



「ハァ……!チッ……」

腰を前後させると、タチバナもそれに合わせキツくペニスを締め付ける。

柄にもなくよがりやがって……!

俺は痛めつけるようにして、亀頭を膣壁に強く擦り付けた。



―――夢はいつも恥辱を与える。

そしてそれが判っていながら、どう足掻いても逃げられない―――



「くそっ……、タチバナぁ……中に、出すぞ!」

俺は最後の一突きと、思い切り腰を突き出した。

「う、うっ……!」

どぷっ……どぷっ……

ぶるっと腰を震わせると、ペニスから精液を一滴残らず放った。

快感の波が遠ざかっていく……

「ハァ、ハァ……あっ」

なんだか違和感を感じ確認してみると、オナホールに切れ目が入ってしまっていた。

どうやら強くピストンしすぎて破れてしまったみたいだった。

「チッ……くそっ!」

駄目になったオナホールを窓から放り捨てると、俺は布団に横になった。


12.jpg





夢でさえまだ現実的だった。

何もかもが不都合に、おぞましく作られていく。

だが夢は夢であって、それは起こりえないことに違いなかった。

にも拘らず、夢は俺を束縛した。

鎖に繋がれているのは、非力を意味した。

なぜ夢で、俺は恥ばかりかく?

どうして誰も同じ目に会わない?

意味のわからないことだらけで、それでも間違いなく言えること……

それは、俺のせいでは全く無いということだけだった。





いつの間に寝てしまったのだろう……夢を見ていた。

景色を上から俯瞰していた。

夕日に染まる放課後。

クラスの下駄箱に、あの男がいた。


13.jpg



周囲をキョロキョロと気にしている……

男は一番右上にある靴箱―――女子の靴箱だ―――に手をかける。

そこから愛おしむかのように、黒光りする皮靴を取りだす……

男の顔が緩む……狂気じみた笑顔だ……

あろうことか、男は靴裏を顔に近づけると……

ゆっくりと舌を突き出す……靴が男の涎で染まっていく。

悦楽に歪む男の顔……

息を荒げ、クラスメイトの女子の靴を自分のものにしていく―――

その男の、俺の顔は……ひどく美しくみえた。




と、急に景色が変わる。

今度は狭い所に押し込められているようだった。

後ろから、やわらかい感触……

耳元に吐息がかかるのを感じた。

背後に女子がいることはすぐに理解できた。

少女がいやらしく動くと、なんだか股間が疼いた。

白いつるりとした太ももが見える……

短いスカートが、ちらちらと俺を誘っているようだ……

まさか、この女子はサイトウなのか?

なぜ……

なぜ、こんなことが起きている……?





そこで、急にこめかみが……こめかみ辺りの血管が、ぶつり、と切れるような感覚が襲った。

視界が完全に真っ暗になると、全身を落ちているらしき浮遊感が包みこむ。

まるで見えないゴムに引っ張られているようだった。

いや実際に引っ張られていたのかもしれない。

考えることもままならず……しばらくして気がつくと、俺は横になっていた。

暗闇に霧のようなものが漂い、異様な雰囲気を醸し出す。


14.jpg


―――――俺は行き沈む船に乗っている。

波に立つ船に、自らの全てを任せた。

ぎこちなく上下する船は、自己を映す役を演じ……

見知らぬ船に揺られようとも、敢えて行く末を望まんとする人間がそこにはいた。

船は無言で彼の道を進む―――――






「待って、いたんですよ……?」

ぞわりと全身が粟立つ。

例のもやりとした違和感、それが全身を囲む。

凛とした声の方を仰ぎ見ると、そこには息を呑むほど美しい女……

いや……こいつは人間なのか?

腰まで伸びるまばゆい銀髪、ほの白い肌、情欲を煽るような変態チックな装い、そして黒い翼に尻尾……

こいつは明らかに(妄想や創造の中では完全に)悪魔―――サキュバスとして目に映った。


15b.jpg



「夢……夢から……あなたを、逃がしてあげましょうか?」

女は人差し指を立てると、不敵に笑った。

俺は女の指先を、自然に舐めしゃぶる。

口に含んだ指先からは、くちゅり、と唇を離れると共に、涎が糸を引いて……

それは地に落ちると、儚く霧散した。






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