C
分岐C、彼女たちがなぜこんな事をするのか尋ねた。
「な、なあ……なんでこんなこと、俺にするんだ……?」
とっさに口から洩れた、不条理に対する疑問。
眼前の少女ははたと動きを止めた。
「へえ、おじさん変なコト言うんだね」
尻尾をぷらぷらさせて、俺の顔をまじまじと見つめる。
「う~ん……おじさん、私におちんちん吸われたくないのかなあ?」
「お兄さん、私たちに気持ち良くしてほしくないんですか……?」
「い、いやあそうじゃなくてだな……どうしてこんなことをしているのかを聞きたいんだ。」
言葉を紡いだ俺は困惑していた。
正直、気持ち良くなりたいという欲望は隠せないでいた。
だが彼女たちはどうみても異常だ。
彼女たちが現れてからの周囲の様子も、なんだか不自然に無関心を装っているようで気味が悪い。
どうにかこの場を凌ぎ、平穏を取り戻さなくてはいけない。
「やはり全部をお話するのは、ここでは……無理、ですね」
黒髪の女性ははにかみながら告げる。
「それはねえ、おじさんがおいしそうだからだよ?」
少女がにやにやしながら俺の首に腕を回す。
甘ったるいような妖艶な香りが鼻をくすぐる。
「ね……一緒に、きもちよくなろ……?」
少女の手が軽く爪を立てて首筋をなぞる……
ぞくぞくとした寒気に似たものが身体の芯を走りぬけ、抜け出しがたい快感に身をよじる……
だ、だめだ!
俺は元の生活に戻るんだ、ここで道を踏み外してはいけないんだ……!
「た、頼むよ!俺じゃなくてもいいだろ?俺は勘弁してくれ!頼む、他をあたってほしいんだ」
俺は少女の抱擁をやんわり振りほどくと、ズボンを履き直しイソイソと逃げようとした。
「あ、ちょっと!」
「お兄さ~ん、どうしたんですか……?」
さっきまで受けていた快感に、髪を引かれる思いがしたが、もう過ぎたことだ。
もう過ぎたことなんだ……
俺は別車両に移動するべく、踵を返して走り出した。
客をかき分けているうちに気付いた……
客の動きがどこかおかしい。
なんだか自分に気付いていないというか、存在を知らないような……
とにかく俺は夢中で人ごみをかき分け進んだ。
しゅるっ……
「逃がしません……!」
「なっ!」
右腕の手首を強烈に締めつけられる。
見ると、黒髪がしっかりと巻きついて離れない!
振りかえると、先ほどのリクルート女が、恐ろしい形相でカツカツと足音を立て近寄ってきている。
彼女が頭を振ると、髪が次々にこちらへ向かって襲いかかってきた……!
「う、うわああああああ!!」
俺はもう半狂乱になって腕に絡む髪を外そうとするが、あまりに強靭に結ばっており外せない!!
その間にも次々に女から伸びた髪が足や首元に絡まってゆく。
「おじさ~ん?」
ぎくっとして振り向くと、そこには後ろにいた筈の少女が、目の前でニヤニヤと笑っていた。
「逃げちゃダメでしょ?……えい!」
少女は両腕を突き飛ばすようにして俺の胸元を押した。
「う、うわ!」
俺は後ろ向きに倒れこんだはずだった。
「な……?!」
だがそこには床はなく、ただただ真っ暗闇の巨大な穴。
ブラックホールに吸いこまれているのかと錯覚を起こしてしまいそうだった。
奈落へむかう落とし穴へ落ちるように、俺は地に落ち続けた―――
……ドスッ!
全身を殴打されたかのような重い衝撃が走る。
腰がしびれるように痛い。
いったい何があったんだ……
恐る恐る辺りをまさぐると、手のひらが冷たい床に触れた。
「ここは……?」
見まわすと、一面の石畳に、壁には欧米風の装飾がそっけなく飾ってある。
なんだか城の地下にいるみたいだ……
ぼうっと揺れる燭台の炎は紫に揺れ、妖しい雰囲気を醸しだしていた。
コンッ……コンッ……
……!
遠くのほう、闇の向こうで物音がした。
誰か来る……?
俺は慌てて逆の方向に這いずり回り、部屋の隅に階段を見つけた。
通路はなんの灯りもなく、俺は手探りの状態で四つん這いになりながら階段を駆け上がった。
なんでこんなことになったんだ……
俺はこんなこと、心から望んだわけじゃないのに……
日常を思い浮かべると、自然と涙で視界がゆがんだ気がした。
……そうだ!
会社に連絡入れないといけないじゃないか!
俺はズボンのポケットから携帯を引きずり出した。
さっさとこんな気味悪いとこから逃げて出社しないと……
俺は携帯の画面を開いて、俺はため息をついた。
やはり電波が立っていない。
「おじさん、何見てるの~?」
……!!!
「おっ、おわあああああああああ!!!」
誰かが携帯の画面を覗きこんできた。
あの電車の制服少女だ!
「うわあああああああああ!!!」
余りの驚きに飛び上がり、俺は一目散に駆けだした。
い、一体いつの間に現れた……?
やみくもに階段を駆け上がる。
途中で靴が脱げ落ちたが、構わず走り続けた。
汗でシャツが身体にぴたりと貼りついていて気持ち悪い。
携帯の光に照らされて浮かぶ少女の顔が目に焼き付いて離れない……
「ハア、ハア、ハア……」
やがて階段通路から抜けた俺は、めまいを覚えながら地面に尻もちをついた。
なんだ、ここは……
まるで、テレビなんかで見る本物のお城じゃないか……
そこはだだっ広い城のような場所だった。
石の壁、鎧の飾りもの、シャンデリア、馬鹿みたいに長い絨毯……
壁の一面は巨大なガラス張りになっており、外の景色が見渡せた。
だが外を眺めてみても、夜のような真っ暗闇が広がっているだけ……
さっきまで日が昇ったばかりだったはずだ。
ここが本当に日本なのかも疑わしくなってきた。
「あらあら、お兄さんこんなところにいたんですか?」
「ひっ!」
ギクリとして顔を上げると、目の前にあの長髪の女が立っていた。
真っ黒なドレスに包まれて、慎ましくこちらをみて微笑む。
息をのむほど美しい―――
「やだな~おじさん、そんな怖がらないでよ~」
背後を振りかえると、例の少女が階段から出てきたところだった。
「ねえ……おじさん?私、なんか悪いことでもしたかなあ?」
腰から尻尾を取りだすと、顔の前に近付ける。
尻尾に指をいれ、くちゅくちゅと卑猥な音を立てていやらしくかき混ぜ……
ちゅぷっ……と指を抜くと、粘性の汁が糸を引いた。
「おじさんも、本当は私とイイコト、したいんでしょ……?」
少女が上目づかいで詰め寄ってくる……
「く、くるなあ!」
俺は後ずさりしながら必死に抵抗を示した。
トンッと背になにかがぶつかる。
肩に腕が回ってくると、あの思考を鈍らせる忌まわしい匂いがした。
「おにいさん……私のこと、おきらいなのですか?」
「くっ、離せ……!」
俺は腕を振りほどくと、絨毯の続く方へと駆けだした。
こんな化け物に捕まってたまるか……!
俺は元の生活に戻るんだ―――
だがそこで、ふと危うい疑問が脳裏をよぎった。
仮に元に戻れたとしても、そこに俺がいる意味はあるのか……?
あのまま居続けても、何か自分を生きたといえることが見つけられたのだろうか……?
変化を求めていたのは自分自身だったのではないのか……?
俺はどこかでこの疑問が本質を射抜いていたことを知っていた。
だから俺は逃げ出しながらも、わずかに躊躇の心があったのを隠せないでいた。
「ああ~!おじさん逃げるな~!」
「待って下さいお兄さん!」
逃亡する俺の背にかけられる声。
と同時に、背筋にぞくぞくとした緊張が走った。
俺はとっさに振り向く。
まばゆい閃光が二つ、こちらに向かって放たれていた……!
これは……?
一体、この光は―――
分岐C-1、俺はとっさに身をひるがえし、青い光を避けた。
分岐C-2、俺はとっさに身をひるがえし、赤い光を避けた。
分岐C-3、二本の光は互いに収束しあい、渦を巻いていた。
分岐C-4、二本の光は互いに発散しあい、渦を巻いていた。
分岐C-5、二本の光は互いに共鳴しあい、渦を巻いていた。
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「な、なあ……なんでこんなこと、俺にするんだ……?」
とっさに口から洩れた、不条理に対する疑問。
眼前の少女ははたと動きを止めた。
「へえ、おじさん変なコト言うんだね」
尻尾をぷらぷらさせて、俺の顔をまじまじと見つめる。
「う~ん……おじさん、私におちんちん吸われたくないのかなあ?」
「お兄さん、私たちに気持ち良くしてほしくないんですか……?」
「い、いやあそうじゃなくてだな……どうしてこんなことをしているのかを聞きたいんだ。」
言葉を紡いだ俺は困惑していた。
正直、気持ち良くなりたいという欲望は隠せないでいた。
だが彼女たちはどうみても異常だ。
彼女たちが現れてからの周囲の様子も、なんだか不自然に無関心を装っているようで気味が悪い。
どうにかこの場を凌ぎ、平穏を取り戻さなくてはいけない。
「やはり全部をお話するのは、ここでは……無理、ですね」
黒髪の女性ははにかみながら告げる。
「それはねえ、おじさんがおいしそうだからだよ?」
少女がにやにやしながら俺の首に腕を回す。
甘ったるいような妖艶な香りが鼻をくすぐる。
「ね……一緒に、きもちよくなろ……?」
少女の手が軽く爪を立てて首筋をなぞる……
ぞくぞくとした寒気に似たものが身体の芯を走りぬけ、抜け出しがたい快感に身をよじる……
だ、だめだ!
俺は元の生活に戻るんだ、ここで道を踏み外してはいけないんだ……!
「た、頼むよ!俺じゃなくてもいいだろ?俺は勘弁してくれ!頼む、他をあたってほしいんだ」
俺は少女の抱擁をやんわり振りほどくと、ズボンを履き直しイソイソと逃げようとした。
「あ、ちょっと!」
「お兄さ~ん、どうしたんですか……?」
さっきまで受けていた快感に、髪を引かれる思いがしたが、もう過ぎたことだ。
もう過ぎたことなんだ……
俺は別車両に移動するべく、踵を返して走り出した。
客をかき分けているうちに気付いた……
客の動きがどこかおかしい。
なんだか自分に気付いていないというか、存在を知らないような……
とにかく俺は夢中で人ごみをかき分け進んだ。
しゅるっ……
「逃がしません……!」
「なっ!」
右腕の手首を強烈に締めつけられる。
見ると、黒髪がしっかりと巻きついて離れない!
振りかえると、先ほどのリクルート女が、恐ろしい形相でカツカツと足音を立て近寄ってきている。
彼女が頭を振ると、髪が次々にこちらへ向かって襲いかかってきた……!
「う、うわああああああ!!」
俺はもう半狂乱になって腕に絡む髪を外そうとするが、あまりに強靭に結ばっており外せない!!
その間にも次々に女から伸びた髪が足や首元に絡まってゆく。
「おじさ~ん?」
ぎくっとして振り向くと、そこには後ろにいた筈の少女が、目の前でニヤニヤと笑っていた。
「逃げちゃダメでしょ?……えい!」
少女は両腕を突き飛ばすようにして俺の胸元を押した。
「う、うわ!」
俺は後ろ向きに倒れこんだはずだった。
「な……?!」
だがそこには床はなく、ただただ真っ暗闇の巨大な穴。
ブラックホールに吸いこまれているのかと錯覚を起こしてしまいそうだった。
奈落へむかう落とし穴へ落ちるように、俺は地に落ち続けた―――
……ドスッ!
全身を殴打されたかのような重い衝撃が走る。
腰がしびれるように痛い。
いったい何があったんだ……
恐る恐る辺りをまさぐると、手のひらが冷たい床に触れた。
「ここは……?」
見まわすと、一面の石畳に、壁には欧米風の装飾がそっけなく飾ってある。
なんだか城の地下にいるみたいだ……
ぼうっと揺れる燭台の炎は紫に揺れ、妖しい雰囲気を醸しだしていた。
コンッ……コンッ……
……!
遠くのほう、闇の向こうで物音がした。
誰か来る……?
俺は慌てて逆の方向に這いずり回り、部屋の隅に階段を見つけた。
通路はなんの灯りもなく、俺は手探りの状態で四つん這いになりながら階段を駆け上がった。
なんでこんなことになったんだ……
俺はこんなこと、心から望んだわけじゃないのに……
日常を思い浮かべると、自然と涙で視界がゆがんだ気がした。
……そうだ!
会社に連絡入れないといけないじゃないか!
俺はズボンのポケットから携帯を引きずり出した。
さっさとこんな気味悪いとこから逃げて出社しないと……
俺は携帯の画面を開いて、俺はため息をついた。
やはり電波が立っていない。
「おじさん、何見てるの~?」
……!!!
「おっ、おわあああああああああ!!!」
誰かが携帯の画面を覗きこんできた。
あの電車の制服少女だ!
「うわあああああああああ!!!」
余りの驚きに飛び上がり、俺は一目散に駆けだした。
い、一体いつの間に現れた……?
やみくもに階段を駆け上がる。
途中で靴が脱げ落ちたが、構わず走り続けた。
汗でシャツが身体にぴたりと貼りついていて気持ち悪い。
携帯の光に照らされて浮かぶ少女の顔が目に焼き付いて離れない……
「ハア、ハア、ハア……」
やがて階段通路から抜けた俺は、めまいを覚えながら地面に尻もちをついた。
なんだ、ここは……
まるで、テレビなんかで見る本物のお城じゃないか……
そこはだだっ広い城のような場所だった。
石の壁、鎧の飾りもの、シャンデリア、馬鹿みたいに長い絨毯……
壁の一面は巨大なガラス張りになっており、外の景色が見渡せた。
だが外を眺めてみても、夜のような真っ暗闇が広がっているだけ……
さっきまで日が昇ったばかりだったはずだ。
ここが本当に日本なのかも疑わしくなってきた。
「あらあら、お兄さんこんなところにいたんですか?」
「ひっ!」
ギクリとして顔を上げると、目の前にあの長髪の女が立っていた。
真っ黒なドレスに包まれて、慎ましくこちらをみて微笑む。
息をのむほど美しい―――
「やだな~おじさん、そんな怖がらないでよ~」
背後を振りかえると、例の少女が階段から出てきたところだった。
「ねえ……おじさん?私、なんか悪いことでもしたかなあ?」
腰から尻尾を取りだすと、顔の前に近付ける。
尻尾に指をいれ、くちゅくちゅと卑猥な音を立てていやらしくかき混ぜ……
ちゅぷっ……と指を抜くと、粘性の汁が糸を引いた。
「おじさんも、本当は私とイイコト、したいんでしょ……?」
少女が上目づかいで詰め寄ってくる……
「く、くるなあ!」
俺は後ずさりしながら必死に抵抗を示した。
トンッと背になにかがぶつかる。
肩に腕が回ってくると、あの思考を鈍らせる忌まわしい匂いがした。
「おにいさん……私のこと、おきらいなのですか?」
「くっ、離せ……!」
俺は腕を振りほどくと、絨毯の続く方へと駆けだした。
こんな化け物に捕まってたまるか……!
俺は元の生活に戻るんだ―――
だがそこで、ふと危うい疑問が脳裏をよぎった。
仮に元に戻れたとしても、そこに俺がいる意味はあるのか……?
あのまま居続けても、何か自分を生きたといえることが見つけられたのだろうか……?
変化を求めていたのは自分自身だったのではないのか……?
俺はどこかでこの疑問が本質を射抜いていたことを知っていた。
だから俺は逃げ出しながらも、わずかに躊躇の心があったのを隠せないでいた。
「ああ~!おじさん逃げるな~!」
「待って下さいお兄さん!」
逃亡する俺の背にかけられる声。
と同時に、背筋にぞくぞくとした緊張が走った。
俺はとっさに振り向く。
まばゆい閃光が二つ、こちらに向かって放たれていた……!
これは……?
一体、この光は―――
分岐C-1、俺はとっさに身をひるがえし、青い光を避けた。
分岐C-2、俺はとっさに身をひるがえし、赤い光を避けた。
分岐C-3、二本の光は互いに収束しあい、渦を巻いていた。
分岐C-4、二本の光は互いに発散しあい、渦を巻いていた。
分岐C-5、二本の光は互いに共鳴しあい、渦を巻いていた。

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